2020年3月、新型コロナウイルス SARS-CoV-2 による感染症 COVID-19 がパンデミック状態となっています。3月16日付の WHO の SItuation Reportによれば、確認されているだけれ感染者数167,515人、死者6,606人に達しています。非常にリスクの高さを感じる中、消毒用エタノールの品薄が常態化しており、みなさん対策に苦慮していることと思います。
消毒用エタノールの入手が困難なため、代替できるものとして、次亜塩素酸水が話題にのぼっています。通販サイトで消毒用エタノールを検索していると、在庫を切らしているショップが代わりに次亜塩素酸水を出してくるようにしているようで、以前よりも目に触れる機会が増えたように思います。次亜塩素酸水でも SARS-CoV-2 を不活化できるのであれば、使ってみたいという方も多いのではないでしょうか。
当サイトでは、次亜塩素酸水が新型コロナウイルス SARS-CoV-2 対策に使えるのかどうか、独自の視点で検討してみました。
当サイトの結論としては、有効塩素濃度40ppm以上の強酸性次亜塩素酸水を用いて、しっかりした量を5〜10秒間接触させれば、新型コロナウイルスを不活化できる可能性が高いのではないかと考えます。
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根拠1: 次亜塩素酸水と次亜塩素酸ナトリウムは同種の抗菌・抗ウイルス活性がある
表1は、強酸性電解水 (次亜塩素酸水のうちpH2.7以下のもの) と 0.1% NaClO (次亜塩素酸ナトリウム1,000ppm水溶液) の抗菌・抗ウイルス活性を比較した表です。
微生物 | 強酸性電解水 | 0.1%NaCIO |
---|---|---|
Staphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌) | <5秒 | <5秒 |
S.epidermidis | <5秒 | <5秒 |
Pseudomonas aeruginosa(緑膿菌) | <5秒 | <5秒 |
Escherichia coli(大腸菌) | <5秒 | <5秒 |
Salmonella sp.(サルモネラ菌) | <5秒 | <5秒 |
その他の栄養型細菌 | <5秒 | <5秒 |
Bacillus cereus(セレウス菌) | <5分 | <5分 |
Mycobacterium tuberculosis(結核菌) | <2.5分 | <5分 |
他の抗酸菌 | <1-2.5分 | <2.5-30分 |
Candida albicans(カンジダ菌) | <15秒 | <15秒 |
Trichophyton rubrum(トリコフィトン) | <1分 | <5分 |
他の真菌 | <5-60秒 | <5秒-5分 |
エンテロウイルス | <5秒 | <5秒 |
ヘルペスウイルス | <5秒 | <5秒 |
インフルエンザウイルス | <5秒 | <5秒 |
0.1%NaCIOは、次亜塩素酸ナトリウム(ミルトン©)を使用 |
これによると、次亜塩素酸水でも次亜塩素酸ナトリウムでも、5秒以内にヘルペスウイルスやインフルエンザウイルスを不活化できるとの結果が読み取れます。
厚生労働省からも、次亜塩素酸水と次亜塩素酸ナトリウムの同類性に関する資料が公表されており、40ppmの次亜塩素酸水と1,000ppm(0.1%)の次亜塩素酸ナトリウムの抗菌・抗ウイルス活性を比較して、10秒以内にヘルペスウイルスやインフルエンザウイルスを不活化できるとの見解を示しています。
機能水研究振興財団も、40ppm強酸性電解水と1,000ppm次亜塩素酸ナトリウムの同等性について述べています (出典: 機能水研究振興財団発行『次亜塩素酸水生成装置に関する指針-第2版追補』2013年)。
なぜヘルペスウイルス、インフルエンザウイルスに着目しているかは、後述します。一般的な消毒で用いる次亜塩素酸ナトリウム水溶液はアルカリ性であるため、ClO-(次亜塩素酸イオン)が主成分であり、強力なHClO(次亜塩素酸)はあまり含まれていない。 対して、酸性である強酸性電解水ではHClO(次亜塩素酸)が主成分であり、有効塩素濃度40ppmの強酸性電解水の殺菌活性は、1000ppmの次亜塩素酸ナトリウムと同等かそれ以上である。
補足: 次亜塩素酸水の種類
「強酸性電解水」という言葉が出ていますが、これは食品添加物としての次亜塩素酸水を pH で3種類に分類したものの1つです。以下の3種類があります。
名称 | pH | 有効塩素濃度(ppm) | 別名 |
---|---|---|---|
強酸性次亜塩素酸水 | 2.7以下* | 20~60 | 強酸性電解水 |
弱酸性次亜塩素酸水 | 2.7~5.0 | 10~60 | 弱酸性電解水 |
微酸性次亜塩素酸水 | 5.0~6.5 | 10~80 | 微酸性電解水 |
ここに引用した抗菌・抗ウイルス活性についての根拠は、いずれも強酸性次亜塩素酸水 (強酸性電解水) について示されていますので、40ppm以上の強酸性次亜塩素酸水を用いるべき、と考えます。
根拠2: 厚生労働省は次亜塩素酸ナトリウムが有効との見解
厚生労働省から、新型コロナウイルスに関するQ&A(医療機関・検査機関の方向け) - 問8 感染の疑いがある患者を診察する際、医療者はどのような準備や装備が必要ですか? という情報が発信されています。手洗いなどの衛生対策を心がけてください。手などの皮膚の消毒を行う場合には、消毒用アルコール(70%)を、物の表面の消毒には次亜塩素酸ナトリウム(0.1%)が有効であることが分かっています。検体を扱う際にも、患者の取り扱い時と同様の感染対策をお願いします。これによると、新型コロナウイルスについても、次亜塩素酸ナトリウムは有効であるとの見解が読み取れます。
結論: 次亜塩素酸水は有効
根拠1、2を併せて考えると、有効塩素濃度40ppm以上の強酸性次亜塩素酸水を用いれば、新型コロナウイルスにも有効であろうと考えて良いと思います。ただし、次亜塩素酸水は次亜塩素酸ナトリウムに比べて濃度が低いため、効果を失うのが早いことに注意が必要です。物の表面に使う場合でもしっかりした量を使う必要がありますし、人体に使う場合は体組織と反応して急速に効果を失いますので、流水で使用するとか、容器に大量に入れた状態で手足を浸すといった使い方をする必要があります。
また、強酸性電解水は、消毒用エタノールに比べて非常に劣化が早く、長期保管ができません。
そのため、強酸性電解水生成器を購入して、大量に使える状態にするのがおすすめです。
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