次亜塩素酸水は劣化が早いので注意!

2020/03/22

pH 次亜塩素酸 次亜水 除菌 消毒 不活化 有効塩素濃度

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消毒用エタノールが入手困難な昨今、代わりに次亜塩素酸水を使いはじめた方も多いかと思います。あるいは、飲食店、医療機関などで働いたことのある方は以前からご存知でお使いだったかもしれません。
次亜塩素酸水は、ノロウイルス、ロタウイルスといったアルコール抵抗性の高い病原体にも素早く効くため、とても頼りになる消毒薬ですが、一方劣化が早いため、管理には注意が必要です。

強酸性次亜塩素酸水の場合

強酸性次亜塩素酸水 (pH2.7以下の次亜塩素酸水) は、とても寿命が短いです。塩素ガスが産生されて、有効塩素濃度がどんどん下がっていきます。
pH2.7 の強酸性次亜塩素酸水の有効塩素濃度が半減する期間は、概ね以下のようになります (室温によっても変わります)。

  • 遮光密閉容器に入れている場合: 約2週間
  • 遮光が不十分だが密閉されている場合: 約3日間
  • 開放容器の場合: 約1日間
pH が低いと、塩素ガスの産生スピードが上がるので、さらに寿命は短くなります。

強酸性次亜塩素酸水は買ってはいけない

これだけ寿命が短いので、強酸性次亜塩素酸水は完成品を購入して使うことは現実的ではありません。遮光密閉されていたとしても、流通の過程で数日経過しますので、10日くらいしか使えません。10日に使い切れるような少量を購入するのは、コストパフォーマンスが非常に悪いと思います。こういう理由で、完成品の強酸性次亜塩素酸水はそもそも市販されていないかと思います。強酸性次亜塩素酸水は、生成器を使って自宅で毎日作って使うということになります。

弱・微酸性次亜塩素酸水の場合

弱酸性次亜塩素酸水 (pH2.7〜5)、微酸性次亜塩素酸水 (pH5〜6.5) については、塩素ガス
の産生が比較的おだやかなので、寿命も長くはなります。
最も安定しているのが pH5 付近となりますが、この場合の寿命は以下のようになります。
  • 遮光密閉容器に入れている場合: 約1年間
  • 遮光が不十分だが密閉されている場合: 約6ヶ月間
  • 開放容器の場合: 約2週間
これくらいの寿命があると、完成品を購入することも可能になってきます。一般には遮光が不十分ですし、密閉されていたとしてもスプレーボトルへの詰め替えなどで何度も開け閉めしますから、寿命としてはもっと短いと考えてください。全量は3ヶ月以内、スプレーボトルに移したものは数日以内に使い切るつもりで使いましょう。

pHと次亜塩素酸の存在比率のグラフを掲載しておきます。厚生労働省「次亜塩素酸水と次亜塩素酸ナトリウムの同類性に関する資料」からの抜粋です。

次亜塩素酸の存在比率のpH依存性

赤く$\ce{Cl_2}$ と示されている箇所は、塩素ガスを発生させて有効塩素濃度を低下させている領域です。

強酸性次亜塩素酸水の pH を上げることはできないか?

生成器で作った強酸性次亜塩素酸水の pH を5くらいまで上げることができれば、保管が効いて便利ですよね。

食品安全委員会「第25回添加物専門調査会」資料1-2:次亜塩素酸水に関する資料概要Bに、生成器で同時にされるアルカリ水を使って希釈して pH5 にする例が載っていました。強酸性次亜塩素酸水 100ml にアルカリ水 70ml を加えて、pH5、20ppm の弱酸性次亜塩素酸水にしています。
この方法、当ブログとしてはおすすめできません。20ppmでも、大量に使用すれば除菌効果はあるわけですが、ちょっと不便に思います。40ppmならば除菌・ウイルス不活化効果はデータが出ているので、安心して使えるのですが、20ppmのデータは見たことがありません。おそらく大量に、かつ接触時間を長く取る必要があるはずですが、日常的に使用するには不便です。
また、実際に混合して有効塩素濃度測定をしてみたのですが、そのときは 100:50 で混合しても10ppm以下まで下がってしまいました。生成器の場合、それぞれの液体がどういうコンディションで生成されているかによって混合比率が変わってきます。毎回試験紙でチェックするのも現実的ではないと思います。

やはり、毎日新たに生成して使うべきかと思いました。

現在、生成時や一定時間経過時の pH, 有効塩素濃度を測定する実験を行っています。データが揃いましたら報告させていただきますので、お楽しみに!

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